歯科の「こんなの欲しかった」を、AIでつくる。
第8回|歯科技工指示書の記載漏れ防止チェック表をAIで作る
歯科技工物を依頼したあと、「材料の指定が分からない」「納期の認識が違う」「確認の電話が何度も必要になった」という経験はありませんか。
歯科技工指示書は、歯科医師の指示を歯科技工所へ正確に伝える大切な書類です。記載漏れを減らすには、指示書そのものをAIに判断させるのではなく、医院と歯科技工所で確認した項目を「送付前チェック表」に整理する方法が役立ちます。
今回は、生成AIを使って、法令上の記載事項と、医院・歯科技工所間で実務上確認したい項目を分けたチェック表のたたき台を作ります。
そのままコピーできるプロンプトと、A4縦1枚の完成見本も用意しました。
- 対象:歯科医師・歯科衛生士・歯科助手・受付・歯科技工士
- 難易度:初心者向け
- 所要時間:約15~20分
- 対応AI:ChatGPT・Claude・Gemini
今回のお悩み
いつもの依頼では問題がなくても、補綴物の種類や材料、色調、納期などが変わると、記載する項目が増えて確認漏れが起こりやすくなります。
また、法令上必要な記載事項と、医院・歯科技工所が連携のために確認している項目が一緒になり、「どこまでが必須なのか分かりにくい」ということもあります。
生成AIは、法令や院内ルールを決めるものではありません。確認済みの情報を、見やすいチェック表へ整理する補助役として活用します。
AIを使うと何ができる?
- 法令上の記載事項と、実務上の確認項目を分けられる
- 補綴物の種類ごとに確認項目を整理できる
- 送付前の確認手順を3段階程度にまとめられる
- 記載漏れがあった場合の問い合わせ文を作れる
- 新人スタッフにも分かりやすい表現へ直せる
- 自院と依頼先のルールに合わせて項目を追加・削除できる
大切な考え方
AIに作らせるのは、個人情報を含まない「確認項目のひな型」です。実在する患者さんの氏名、患者番号、口腔内写真、スキャンデータ、治療内容などを生成AIへ入力してはいけません。実際の歯科技工指示書は、指示を行う歯科医師が内容を確認して発行します。
そのまま使える完成プロンプト
以下のプロンプトをコピーし、【 】の部分を自院の内容へ書き換えてください。
「Copy」を押すと、プロンプト全文をコピーできます。
プロンプトの使い方
STEP 1 現在の指示書を手元で確認する
現在使っている歯科技工指示書と、依頼先から案内されている記入方法を確認します。生成AIへ指示書の画像や患者情報をアップロードしません。
STEP 2 項目名だけを書き出す
「設計」「使用材料」「納期」など、空欄の見出し名だけを入力します。患者氏名、部位、色調、治療内容など、実際の症例情報は入力しません。
STEP 3 プロンプトをコピーする
「Copy」ボタンを押し、プロンプト全文をコピーします。
STEP 4 【 】へ自院の情報を入力する
よく依頼する歯科技工物、依頼先のルール、起こりやすい記載漏れ、迷ったときの確認先を入力します。
STEP 5 生成AIへ貼り付ける
ChatGPT、Claude、Geminiなどの入力欄へ貼り付けて送信します。
STEP 6 法定項目と実務項目を照合する
AIの回答をそのまま使わず、厚生労働省・e-Govの最新条文、現在の指示書、依頼先の歯科技工所の案内と一項目ずつ照合します。
STEP 7 歯科医師と歯科技工所が確認する
実際の運用を始める前に、指示を行う歯科医師と依頼先の歯科技工所が確認します。必要に応じて、管轄行政や専門家へ相談してください。
実際に作るとこうなる
完成見本は、A4縦1枚に次の内容をまとめています。

- 法令上の記載事項を確認する欄
- 2026年10月1日から追加される歯科技工所番号の確認欄
- 補綴物の種類、部位、材料、色調、納期などの実務確認
- 不明な内容をAIで補わず、歯科医師・歯科技工所へ確認する流れ
- 患者情報を生成AIへ入力しない注意
- 指示を行う歯科医師による最終確認欄
この完成見本は、上記プロンプトをAIに入力して得られる出力例です。歯科技工指示書そのものではなく、送付前に使用する補助チェック表です。
実際に使用する際は、自院の指示書、依頼先の歯科技工所、最新法令に合わせ、指示を行う歯科医師と歯科技工所が確認してからご活用ください。
| Before 指示書を送ったあとに不足項目が見つかり、確認の電話や作業待ちが発生する。 | AI活用 患者情報を使わず、法定項目と実務項目を送付前チェック表へ整理する。 | After 何を誰が確認するかが見え、記載漏れと確認の往復を減らしやすくなる。 |
うまくいかない例と直し方
AIが実際の指示書を作ろうとする
「患者情報を含まない一般的な送付前チェック表だけを作ってください」と追加します。実際の指示内容や患者情報は入力しません。
法定項目と便利な項目が一緒になっている
「法令上の記載事項」と「医院・歯科技工所間の実務確認」を別の枠に分けます。法定かどうか不明な項目は「法令確認」と表示します。
材料や色調をAIが勝手に補っている
推測で埋めた部分を削除し、「歯科医師確認」または「歯科技工所確認」へ置き換えます。AIの提案を、そのまま指示内容にはしません。
チェック項目が多すぎて使われない
「毎回確認する項目」と「該当する場合だけ確認する項目」に分けます。実際に起こりやすい記載漏れを優先し、A4・1枚に収めます。
患者情報を含む指示書をアップロードしてしまう
実際の指示書、口腔内写真、スキャンデータは生成AIへ入力しません。ひな型を作るときは、空欄の項目名と匿名化した一般例だけを使います。
もう一歩よくする追加指示プロンプト
1.新人向けにやさしくする
入職1か月以内の新人スタッフが使用する前提で、専門用語には短い説明を付け、1項目を20文字程度にしてください。
2.法定項目と実務項目を分ける
項目を「法令上の記載事項」「医院と歯科技工所で決めた確認事項」「該当する場合だけ確認」の3つに分けてください。不明なものは法定と断定せず「法令確認」と表示してください。
3.補綴物別に整理する
共通項目の下に、「クラウン・ブリッジ」「義歯」「マウスピース」の追加確認欄を設けてください。材料や設計は推測せず、空欄のチェック項目だけにしてください。
4.A4・1枚へ短くする
重要項目を削らず、A4縦1枚で確認できる分量へ整理してください。毎回確認する項目を上段、該当時だけ確認する項目を下段にしてください。
5.確認先を明確にする
各項目の末尾に「歯科医師確認」「歯科技工所確認」「院内責任者確認」「法令確認」のいずれかを付け、誰へ確認するか分かる形にしてください。
ChatGPT・Claude・Geminiで使うときのポイント
今回のプロンプトは、ChatGPT、Claude、Geminiなどの生成AIで使用できます。
- 実際の指示書ではなく、空欄の項目名だけを入力する
- 患者氏名、患者番号、口腔内写真、スキャンデータを入力しない
- AIが補った材料・設計・部位・色調・納期を採用しない
- 法定項目と実務上の確認項目を分けて出力させる
- 最新法令と歯科技工所の運用へ照合する
- 最後は指示を行う歯科医師と依頼先の歯科技工所が確認する
短いチェック表のたたき台は、各サービスで文章を入力できる環境から試せます。ただし、利用できる機能、料金、利用上限、ファイルの取り扱いは変更されることがあります。利用時点の各社公式情報を確認し、確認できない内容は断定しないでください。
最初は文章だけで始めて大丈夫です
指示書ファイルをアップロードしなくても、「現在の項目名」「よく起こる記載漏れ」「確認先」を箇条書きで入力すれば、一般的なチェック表のたたき台を作れます。
患者情報を含む文書や画像を生成AIへ読み込ませる方法は、この用途ではおすすめしません。
無料プランから始めて大丈夫です
このテーマは、まず無料プランで文章のたたき台を作るだけでも十分に試せます。最初から有料プランが必要とは限りません。
一方で、複数の院内資料をまとめて見直す、ファイルを何度も分析する、画像や長い作業工程を使う、といった場面では、有料プランの方が作業しやすいことがあります。OpenAIはPlusについて、Freeより広いモデル・ツールへのアクセスや高い利用上限を案内しています。ただし上限や利用できる機能は変わるため、公開時点の公式情報で確認します。
個人情報・医療安全のお願い
入力しない情報
実在する患者さんの次の情報を生成AIへ入力しないでください。
- 氏名、イニシャル、生年月日、住所、電話番号、メールアドレス
- 患者番号、診察券番号、予約情報
- カルテ、病歴、服薬情報、治療内容
- 口腔内写真、顔写真、エックス線画像、検査結果
- 口腔内スキャンデータ、模型を特定できる情報
- その他、複数の情報を組み合わせると個人を特定できる内容
次回予告
第9回は「院内モニター用30秒動画の絵コンテをAIで作る」です。
患者さんへ伝えたい内容を、短い見出し・画面構成・表示時間へ整理する方法をご紹介します。


